ミャンマーの地理と歴史

                         NPO ザ・コンサルタンツ ミャンマー 理事長
            中小企業診断士  都築 治

1 ミャンマー連邦―概要
   (1)地理   
ア 位置
ミャンマーは東南アジアの西部に位置し、東側はタイとラオスに、北東部は中国に、北西部はインドに、西側はバングラデッシュと境を接している。そして、海岸線はアンダマン海、マルタバン湾、ベンガル湾に臨んでいる
 ミャンマーは676,577. kuの広さがあり、南北に長く東西は狭い。最長2,052 km、最大幅は 937 kmである。日本の約1.8倍の面積があり、東南アジア大陸部諸国の中で最大の面積を誇っている。
イ 地勢
 ミャンマーは山岳に富み、北から東部、西部へと山脈が広がる。そして高地は北から南へと延び、中央部には大きな平原と峡谷がある。この地形は、4つに類型することができる。すなわち、東部高地、西部山岳地帯、中央平原、及び沿岸地域である。
 ほとんどの河川は、北部の高地を発し南部の海に注いでいる。著名な河川としては、エーヤワディ川、タンルウィン川、チンドウィン川、シッタウン川がある。エーヤワディ川は全長 1,992 kmあり、最もよく利用されている。タンルウィン川は1,281 km、チンドウィン川は1,112 km、シッタウン川は299 kmである。
ウ 気候
 ミャンマー国土の大半は熱帯性気候で、暑季、雨季、乾季の3つの季節がある。暑季は2月末から5月中旬まで、雨季は5月中旬から10月まで、乾季は10月から2月までである。
ラカイン州とタニンダーイ海岸地方は降雨が多く、年間の降雨量は3,800 mmにもなる。デルタ地帯では年間降雨量は2,000 mm程度で、乾燥地帯では1,000 mm程しか降らない。12月と1月は最も涼しく、4月と5月は最も暑い。ミャンマー中部では摂氏38度から42度、時にはもっと暑くなることさえある。

(ア)暑季
 暑季は2月の終わりから5月の第2週頃で、この季節は概ね乾燥しており、ほとんどの地方で気温が高い。ラカイン州やモン州 、タニダーイ地区、エーヤワディ地区やヤンゴン地区などの沿岸地帯は、中央ミャンマーのマンダレー地区やマグウェ地区のような乾燥地帯に比べるとそれほど暑くない。緯度が低くなるにつれ気温は下がり、カチン州やシャン州のような丘陵地帯や高原地帯では、暑季でも涼しいほどである。シャン高原にあるタウンジー、カロー、及びピンウールインなどは避暑地となり、多くの人が休暇を過ごす。

(イ) 雨季
 雨季は、5月の第3週モンスーンの始まりの時期から10月まで続く。ミャンマーで最も降雨量の多い地方は、ラカイン地区やタニダーイ地区のような沿岸地方で、山脈に相対した地域である。デルタ地帯や丘陵地帯も降雨量が比較的多い。中央ミャンマーの平原部では、降雨量が最も少ない。ラカイン州およびタニダーイ地区では3,800ミリメートル以上の降雨量があるが、デルタ地帯と丘陵地帯ではそれぞれ2,000ミリメートル及び1,500ミリメートルの降雨量である。しかし、中央ミャンマーの年間降雨量は1,000ミリメートルを超えることはほとんどない。

(ウ) 乾季
 乾季は11月から2月である。貿易風が、ミャンマーよりも気温の低い北東アジアの内陸高地より吹いて、ひんやりと乾燥した季節となる。シャン高原の場所によっては、夜間と早朝には氷点下の気温になる。カチン州の最北部では、寒い時には山々が積雪することさえある。対照的に、沿岸部のラカイン州及びタニンダーイ地区では、晴天で穏やかな気温となる。


エ 森林
 森林のタイプは降雨量によって異なり、年間降雨量が2,500ミリメートル以上の所では熱帯雨林が見られる。降雨量が1,000から2,500ミリメートルの所では落葉樹林が、1,000ミリメートル以下の所では、大きな潅木のブッシュ.が見られる。高価なティークや堅木類はミャンマーの熱帯雨林に生育する。

ミャンマーの天然林は次のように分けることが出来る。
(ア) 常緑樹林(Evergreen forest)
 常緑樹林は降雨量の多いラカイン州、タニンダーイ地区、南部バゴー山脈、北部ミャンマーに見られる。樹木の葉が1年中緑を保っているため、常緑樹林と呼ばれる。常緑樹林では、巨木が竹や籐、蔓草などと共生している。それら高木には、蘭のような共生植物も着生している。

(イ) 落葉樹林(Deciduous forest)
 落葉樹林は中程度の降雨量の地域に見られる。樹木は大きいが、乾期には土壌が乾燥するため落葉する。落葉樹林には、高価なティーク、テツボク(ピンカド)、ブナ、 カリンが見られ、竹も大木と共生している。

(ウ) 乾燥林(Arid forest)
 乾燥森林は中央ミャンマーの乾燥地帯に見られ、樹木の葉は小さく、蒸発によって水分が失われないようになっている。草木には刺のあるものがある。乾燥森林では、疎らにしか樹木は生えない。この種の森にはアセンヤクノキ、シロガワアカシア、ナガエミカン、及び なつめが生えている。

(エ) 丘陵林(Hill forest)
 山岳地帯では気温が低いため、耐寒性の樹木からなっている。松、樫、栗が生える。
(オ) マングローブ林(Mangrove forest)
沿岸地方の塩性地帯にはマングローブの森林が見られ、耐塩水性の木々が植生している。土壌が海水に充たされており、大気を含んでいないため、この樹木は高足状の幹と根を持っている。ハマザクロとヒルギが、マングローブの中でもよく知られている種である。

  (2)民族・文化

ア 人口 
 2007年の公式の統計によれば、ミャンマーの人口は5,764万人である。

イ 人種
 ミャンマーには数多くの民族が共存しており、約135の民族が居住している。主な民族としてはカチン、 カヤ、カイン、チン 、バマー、モン、 ラカイン、及びシャンがある。それらの中で、バマー族が最大で全体の68%を占める。

ウ 言語
 公用語はミャンマー(バマー)語で、第2公用語として英語が使用されている。各州においては、それぞれの民族の言葉が広く話されている。

エ 宗教
 人口の80 %以上が上座部仏教を信仰している。その他、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、アニミズムも信仰されている。ミャンマーでは、国民の信教は自由である。

オ 国旗

旧国旗 新国旗

 ミャンマーの旧国旗は、真紅を背景に、左上の四角の紺地に白色の稲穂とそれを囲む歯車を14個の星が取り巻いているものであった。赤は気高い心、紺は平和と安定、白は純粋を表し、稲は農民を、歯車は労働者を示し、14個の星は、7つの州と7つの地区が平等であるという連邦の精神を表していた。
 新しい国旗は、上から同サイズの黄、緑、赤三色の横縞の中央に、大きな白い星を配置したものである。黄色は団結を表し、緑は平和、静けさ、国の青々
とした緑豊かな環境を表し、赤は気高い心、勇者と決断力、愛を表している。白い大きな星は統一した連盟の永遠の存在を示したものである。

カ 通貨

 ミャンマーの通貨単位はチャッ(kyat)で、1チャッは100ピャである。公用通貨は5000、1000、500、200、100、50、20、10、5チャッと50ピャがあるが、現在ではピャはほとんど使われていない。

キ 州並びに地区の行政庁所在地

  カチン州(Kachin State) ミッチーナ(Myitkyina)
ロカヤ州(Kayah State) ワイコー(Loikaw)
カイン州(Kayin State) パアーン(Pha-an)
チン州(Chin State) ハカー(Hakha)
ザガイン地区(Sagaing Division) ザガイン(Sagaing)
タニンダーイ地区(Tanintharyi Division) ダウェ(Dawei)
バゴー地区(Bago Division) バゴー(Bago)
マグウェ地区(Magway Division) マグウェ(Magway)
マンダレー地区(Mandalay Division) マンダレー(Mandalay)
モ ン州(Mon State) モーラミャイン(Mawlamyine)
ラカイン州(Rakhine State) シットウェ(Sittwav)
ヤンゴン地区(Yangon Division) ヤンゴン(Yangon)
シャン州(Shan State) タウンジー(Taungyi)
エーヤワディ地区(Ayeyarwady Division) パテイン(Pathein)


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